嘘の続きは
高層ビルが建ち並ぶオープンスペースにはベンチが置かれていて、恋人たちが楽しそうに語り合っていたり、肩を寄せ合っていたり。

私たちも空いているベンチに座り、キラキラと煌めく街を眺めた。
隣にいる愛する男性とコートとマフラーだけで十分に過ごせる気温も後押ししてくれて今年の冬の寒さは厳しくない。

「星が降ってくるみたい」
「ああ綺麗だな。
こんな風に落ち着いてイルミネーション見るなんて何年振りかな。もう思い出せない…ずっとただの景色だったからな」
「真島さんってずっとずっと忙しすぎだもの」

おそらく真紀を担当した15年以上前からずっと駆けるように日々を過ごしているのだろう。
忙しくてイルミネーションを眺めることもなかったみたいだ。

「俺の夜景の思い出と言ったら・・・こんなイルミネーションじゃなくて、空港の夜景だな」

空港の夜景

「真島さん、国内も海外も移動多いから?」

「確かに空港を使う機会はたくさんあるけど、いつもは空港の風景なんて見てない。ゆっくり眺めたのは朋花を真紀のいるシンガポールに連れて行く時に寄った空港のラウンジから見た時だけだ」

うん、それは私もよく覚えてる。
あの時私は人生二度目の海外で緊張していた。一度目は修学旅行だったし。
それに、夜の空港は初めてで、おまけに憧れの真島さんと二人きりだったし。
キラキラした飛行機のライトと誘導灯空港デッキのライトにまるでおとぎ話の中にいるような気持ちになっていた。
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