嘘の続きは
「ではーーーこの数か月間お疲れさまでした。明日の記者発表の時間は朝10時からですからそれまではここから出ないようにお願いします」

カツンという男の靴音を背中で聞いた。

ーー帰るんだ。私の返事は必要ないってか。

だったら早く出て行って。
これで私はもう用無しで、この先このオトコとの接点はほとんどなくなるだろう。

私の背後で玄関ドアがゆっくりと閉まっていった。

私は背中を向けたままハイヒールも脱がず身動きもできずに立ち尽くしていた。

ドアが閉まる直前
「おやすみ、”朋花”」と囁くような声が聞こえ、驚いて振り返ったけれどすでにドアは閉まっていてオトコの姿はもう見えない。

あのオトコは、最後の最後で私の名前を言った。
朋花、と。

耳を澄ますと遠ざかるオトコの靴音がかすかに聞こえ、冷たい涙が私の頬を伝っていった。

下手な優しさなどいらないのにーーーー






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