嘘の続きは
「失礼しまぁす~。真島さんここに居るんでしょう?」

返事をする前にドアを開けられ、キラキラした綺麗な女性が入ってきた。言葉遣いは幼いもののどう見ても私よりも年上。年齢は真紀と同じくらいに見える。

部屋の中に真島さんだけでなく私もいることに気が付いて、彼女がきりりとした眉をギュッとしかめるのが見えた。

だ、誰?

そう思った途端、真島さんがサッと彼女の元に向かい、何と彼女を抱き寄せいきなり口づけた。

目の前で起こった驚きの出来事に一瞬で血の気が引いていく。

何?
何が起こっているの?

「待ってたよ、ハニー。でも生憎ここじゃ二人きりになれない。ホテルに移動しようか」

真島さんは彼女の耳元で甘い声を出している。
私に聞こえるようにだろう、わざとゆっくりと。

かあっと体の中に血液が回り始めて我に返った私はソファーに置いていたバッグをひっつかむと、首からぶら下げていたビジター用のIDカードを真島さんに叩きつけて楽屋を飛び出した。
背後でカードがどこかに当たり床に落ちた音がした。

ひどい、ひどい。
こんなのってない。
泣きながら走って建物を飛び出し、そのまま息が切れるまで走り続けたーーー。

近くのバス停も電車の駅も通り過ぎて歩道を駆けていく。

立ち止まらないようにひたすら走っていたら息が切れ足が痛くて仕方なくなり、ようやく立ち止まった時には自分がどこにいるのか全くわからなくなっていた。
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