嘘の続きは
『ごめん、急に用事を思い出して帰ったの。明日からの撮影も頑張ってね』

急に帰った理由などすぐに思いつくこともできず、当たり障りのない返信をしておいた。

また後でなにか言われるだろうけど、それは仕方ない。
でも、真島さんにフラれたことを姉には知られたくない。おそらく真島さんが姉に告げることはないと思うけれど、この先は言葉を選んで姉に対応しなくてはならない。

この先を考えると、さらに気が重くなる。

救いなのは来月から就職して新しい生活が始まるタイミングだったってことだろうか。
仕事が大変だと言っていろいろなことから距離を置こう。


それからよろよろと立ち上がり電車の駅を目指して歩き出した。

公園のベンチに座っている時には気が付かなかったけれど、歩き出したら足がかなり痛むことに気が付いた。

よく見たらお気に入りのパンプスはあちこち傷だらけだし、気に入って買ったばかりのスカートもしわしわ。

…何やってるんだろ、私って。

一回り以上年上の男にバカみたいに調子に乗って告って冷たく拒絶され走って逃げだして。

真島さんにとって私の存在なんてしょせん大事な真紀の妹でしかなかったのに。
調子に乗って彼に付きまとって。
迷惑でしかなかっただろうにそれに全く気が付かずにいて。

ーーーそれからやっとのことで辿りついた駅から電車に乗り、山手線をボーっとしたまま乗り続け2周したところでやっと頭が冷えてきた。

もう忘れなきゃ。
スマホを取り出して真島さんの連絡先を削除したのだった。
< 26 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop