嘘の続きは
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「明日の朝5時に迎えに来る。朝が苦手な真紀に早朝ロケはきついけど目覚まし3個でしっかり起きろよ」
玄関の鍵を開けていると、背後であの男がそう言いだした。

真紀は今夜西隼人とお泊りで帰ってこない。
真紀はこっそり密会先からロケ現場に行くから必然的に明日の早朝ここからロケ先に向かうのは影武者である私だ。

姉妹揃って朝起きが苦手。
でも、社会人の私は就職してから実家を出て一人暮らししているしそんなことは言っていられない。
今の私は目覚まし時計が一つあればどんな早起きも乗り切れようになっていた。

未だに目覚ましを3個セットしていても起きられないのは真紀だけだ。
わざわざそんなことまで言わなくていいのにこのオトコは”真紀のことなら何でも知っている”とでも言いたいのだろうか。

やっぱりこんなオトコ、大っ嫌い。

「じゃあお休み、真紀」

あの男の声に背を向け無言を貫いていると玄関のドアが閉まっていく。

そもそも向こうも私の返事を必要としていたわけじゃなかったのだ。

立ち去る靴音を聞いた途端、怒りがこみ上げ衝動的に手にしていたトートバッグを廊下に向かって投げつけた。

腹が立って仕方がなかった。

ガシャン!

割れた音にしまったと思ったけれど、もう遅い。

あろうことか投げたトートバッグがエントランスに飾ってあった花瓶に命中してしまい、運悪く床に倒れて割れてしまったのだ。

大きめの帆布性のトートバッグは私と真紀がお揃いで買ったもので、影武者をするときにお互いの荷物を入れ替えしなくていいという利点があったけれど、結構頑丈だった。
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