嘘の続きは
オトコの視線の先は私の右耳だった。

耳たぶに触れてみると、ピアスホールを隠すためにつけていたイヤリングがなくなっている。
どうやらトートバッグを投げた拍子に右耳のイヤリングだけが外れてしまったらしい。

足元に視線を落とすとピンクパールが3つ連なったデザインのイヤリングが落ちていた。

「真紀は開けてないもんね。誰かに見られないようにイヤリングと髪で隠しているから心配しないで」
私はくるりと背を向けイヤリングを拾いあげた。


明らかな私と真紀の違い。
それはピアスだ。

私は失恋を経験してすぐにピアスをあけていた。

これは私の戒めのようなもの。
もう二度と勘違いしないようにーーー

そんな私を無視するようにオトコは慣れた様子でエントランスのウォークイン収納スペースの扉を開き、ごみ袋やサイクロンクリーナーを手にして戻ってきた。

サッと屈み込んで素早く花瓶の大きな破片を集めると、クリーナーで吸い取っていった。
水分さえ吸い取ってしまうクリーナーがこの家にあったことも知らなかったし、あっという間に片付けが終わったことにも驚いて私はただ茫然と見ていただけだった。
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