嘘の続きは

影武者4

真紀と西さんの交際は順調だったけれど、仕事のスケジュールとスポンサー企業の根回しが大変らしくまだまだ交際を公にするわけにはいかないと言うので、その後もまだ私の影武者生活が続いていた。

真紀、そして西隼人もマスコミに気付かれぬようかなり慎重に動いていた。

二人で歩く将来が見え始めても隠していたのは仕事にいい影響をもたらす時期に華々しく発表したいからという思惑があるからだ。

しかし
ーーー影武者をしてもうすぐ１年が経とうとする頃、いきなり私の役目が終わりを迎えた。

夜遅くにロケ先に呼び出されたと思ったら真紀は私にキラキラとした笑顔を見せた。

「急だけど、来週婚約発表することになったの。だから影武者ももうすぐ終わり。朋花、今まで本当にありがとう。最後の1回までお願いね」

「そうなの？」
プロポーズされたのは聞いていたけれど、二人の仕事を考えるとこんなに早くまとまるとは思っていなかった私はとにかく驚いた。

突然の婚約発表は事務所の事情だというけれど秘密の恋を公にできて、しかもその先に結婚が決まっている状態での発表となれば女としても女優としても嬉しくないはずがない。

真紀は今まで以上にキラキラとしている。

「そ、そう。おめでと」
驚いて声がかすれてしまう。

明日は来週の婚約発表の打ち合わせらしい。こんな時期になってもどこかにすっぱ抜かれないようにとかなり慎重に動いているのがわかる。

何か事情があるらしいけれど、それは私には関係のないことだろう。

「最後まで気を抜かないで頑張るね。無事に終わったらとびきりのご褒美待ってるから」

最高に嬉しそうな表情の真紀に向かって私も素直にニカッと笑顔を見せると、真紀からはとびきりの笑顔が返ってきた。

それは女優秋野真紀の笑顔じゃなくて子どもの頃から見慣れた素の姉の笑顔だった。

妹としてもこんなに嬉しいことはないはずなのに姉を取られるような微妙な気持ちになったのは内緒だ。