嘘の続きは
「ご褒美何にしようか。無事に発表したら何かプレゼントするわね。朋花の喜びそうなものを考えておかないと」

真紀はどこから手に入れたのかホテルのフロントスタッフの制服を手に取った。

ふうん、今夜はホテルスタッフの変装でここから抜け出す予定なのか。

「姉上の経済力に期待してます」

真紀の幸せそうな表情に私の心もほぐれていく。
お姉ちゃんは西さんと幸せになるのだ。

「わかった。
--そうね、私の財力を最大限に使うとして…フランスの古城とか、月の土地とかスケールの大きなものをあげるわね」

真紀の悪戯っぽい笑顔に私はプッと吹き出した。

「そんなのもらっても管理できないじゃん~。大体見に行くこともできないし」

お城とか月とか。
あまりに非現実すぎて笑えてくる。

姉妹で笑っていると、私にウイッグをつけながら田所さんも笑っている。

「朋花ちゃんのそんな笑顔、再会してから初めて見たわ。大人になったけれど、やっぱり朋花ちゃんはすましてるよりこっちの方が可愛いわね」

「そうよね、私もこっちの朋花が好きなんだけど、この子、大学卒業のあたりで仮面をつけること覚えちゃったもんだから。
しかも、この影武者頼んでからはさらにひどい」

真紀の言葉にギクッとした。
真紀の婚約発表に浮かれてつい外で被っていたいつもの仮面をつけるのを忘れていた。

気配を消しているけれど、この部屋の奥にあの男がいつものように壁にもたれて立っているのに。

前以上に仮面をつけるようになったのはあの男に拒絶された日からだ。

あの男には子どもの自分から逃げるために大人の仮面をつけるようになったことを知られたくないという気持ちが大きい。

< 39 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop