嘘の続きは
「これは話題作りじゃなくて。本気のヤツ」

え?

「今、本気って言った?」

「そう。だからお願い。助けて」

真紀は両手をこすり合わせうるうるとした瞳を上目遣いにして私を見つめてくる。

あ、アラサー女子のくせにかわいいーーーっていかんいかん!また騙されるとこだった。

「お姉ちゃん、今度は騙されないから」
腕組みして睨むと真紀は笑い出した。

「ごめん、違う。確かに前回その手で枯れてる朋花を誘い出して男を紹介するような真似をしちゃったから、信じてもらえないかもしれないけど」

そうなのだ。

半年ほど前に「好きな人と食事がしたいからマスコミの隠れ蓑になってちょうだい」と姉に呼び出され指定されたレストランに行ってみれば、待っていたのは真紀と真紀のマネージャー。それと外資系企業で働いているという若い男性がいたのだ。

高級そうなスーツに凛々しい顔立ち。
素敵な人だとは思うけど、なんだか真紀のタイプじゃないような気がする。
好みが変わったのかなと思い真紀の顔を見ると彼女はパチリと音がしそうな綺麗なウインクをした。

「じゃあ後は若い二人でぇー」なんて言葉を残していきなり席を立って逃げるように帰って行った真紀と真紀に引きずられるように出て行ったマネージャーの申し訳なさそうそうな表情に一瞬でコトを理解して姉に対して殺意が湧いてきた。

確かにここ数年の間私に男っ気はないけれど、真紀に男性を紹介して欲しいだなんてことはひと言も言ったことはない。
目の前の彼は真紀のお相手などではなくて私にどうかと紹介するために用意された男性だったのだ。

すぐに優良物件と思われる目の前の男性に謝罪をして私も早々に帰宅したのだ。
私は今男性とお付き合いする気はない。

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