嘘の続きは
早朝のラウンジは私の憩いの場となり、自然に笑顔も出るし、隠していた本来の性格も自然と出てしまうこともある。
ここの人たちには仮面を外してもいいと思っていたし、というか仮面を被っていられない。


「はい、これイタリアのお土産です」
東くんが持っていた袋をひっくり返してテーブルの上に小箱をざらざらっと乱暴に出した。

「あー!これは!!」

私の好きなブランドチョコレートだ。
真紀のイタリア土産でもらって以来そのくちどけの良さに虜になってしまったチョコレートだった。

なんてことをするんだ。
「こんな高級品をそんな乱暴に扱って~東くん、絶対にばちが当たるからっ」

あり得ない。
ひと箱に2粒しか入ってない最高級チョコレートがばらばらとテーブルの上であちこちにひっくり返っている。

ひいい~っと顔色をなくしてきちんと上を向けてきれいに並べはじめてしまう。

「リボンなんてすぐ外すし、箱が逆さになってもどうせ口に入れば同じですよ」
東くんに呆れたような声で言われる。

「違う。これは違う。これはもっと敬意を払って食べないとだめなの」
ドンっとテーブルを叩いて力説すると、ぷっと吹き出されてしまった。

「熱いっすね、秋野さん」
「これは別格」

そんな私の姿をさらけ出せるほどここの人たちとの付き合いは心地いい。
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