嘘の続きは
「果菜ちゃん、コレ私の妹の朋花。トシは果菜ちゃんと同じよ。見た目も中身も果菜ちゃんよりずっとがきんちょだけど」

真紀がひゅっと私の襟首をつかんで果菜さんの前に差し出すようにして「仲良くしてやって」と言った。

ネコじゃないんですけど。

姉の腕を振り払って私は笑顔を作った。

「初めまして。秋野朋花です」

「こちらこそよろしくお願いします。水沢果菜です。この近くのクリニックでナースをしています」

彼女はぺこっと頭を下げた後、私と視線が合うと改めてにっこりと笑った。

その笑顔がとても綺麗でちょっと驚いた。
しかも私とは全く違う本物の笑顔だ。

真紀の仕事のせいで業界の人を見慣れている。
女優だけでなく、アイドルにモデル。美容業界人やファッション業界の人間も。
綺麗なヒトなら何百人も。

でも、この果菜さんは別格。

スタイルは普通。モデルたちのように細身でなければグラマラスでもない。
顔も綺麗だけど、飛びぬけているわけではない。
でも、なんだろう。
雰囲気が他の誰とも違う。

「この子がタカトの大切な『姫』なの。よろしくね」

山崎社長の言葉にやっぱりねと思った。

「タカトがひとりで可愛がってて愛でていて。あまりに部屋に隠してばかりいて果菜ちゃんが爆発しちゃうといけないと思って連れ出したってわけ」

山崎社長がニヤニヤしながらそう言って彼女の頬をツンっとつついた。

「清美さん、えっと・・・爆発はしないし、貴斗はそんなに愛でてませんよ。そんなことないっていうか・・・」

言いながら果菜さんは真っ赤になっていった。

「あはは。タカトに可愛がられていることは否定できないわよねぇ」
真紀も何かネタを握っているらしく一緒になって果菜さんをからかいはじめた。

「いえっ。あ、うーん。確かにそうなのかもしれないですけど、でもーー」と眉間にしわを寄せて真面目に困っている彼女は可愛らしくとても自然体で美しい、と思った。

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