嘘の続きは
彼女は私と違って仮面をつけていないようだった。

芸能人の恋人であるだけで彼女自身はただの一般人だということは自己紹介の言葉からもわかる。

タカトが彼女を隠していたのは、周りを執拗に嗅ぎ回るマスコミと一部の悪質なファンや一般人から彼女を守るためなのだろう。

”ロックスターの王子様”の腕の中で大切に守られている”姫”。

私のように”大切な女優”の”妹”だからという理由で事務所の人間からフォローされていた小娘とは立場が違う。

タカトの姫が羨ましい。
私とは違う本物モノの愛で守られている彼女が心底羨ましい。

ふと真島さんに守られていた頃の自分を思い出して胸が痛くなる。
私の黒歴史。
真っ黒な。

自分の立場もわからずに大切に守られていると思っていたバカな私。
実際は大事な女優の妹だっただけだったのに。


「あの・・・”朋花さん”とお名前でお呼びしてもいいですか?」

気が付けば、タカトのお姫さまに話しかけられていた。

「ごめんなさい。親しくもないのに。でも、”秋野さん”はお二人いらっしゃるので」
困ったように笑顔で話しかけてくるお姫さまに悪意はないようだ。

「もちろんです。何なら呼び捨てでも構いませんよ」

私の言葉にホッとしたような息をついて「ありがとうございます。では私のこともよかったら”果菜”と呼んでください」とほんわかとした笑顔が戻ってきた。
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