嘘の続きは
予想外の出来事
「秋野さん、今夜行けますよね?」
松下君に今夜の予定を確認され即座に笑顔で頷いた。
「もちろん。絶対に参加。あの丸山シェフの料理が食べられるんだもの。でも本当にいいの?」
営業企画部の松下君絡みでここの休憩室メンバーが、超有名なイタリアンのシェフ丸山氏のレストランで行われる試食会という名の食事会に招待してもらったのだ。
「よかった。今回は着座じゃなくて立食パーティーのような方式で多くの人に試食してもらうのが目的ですから。参加人数も多いのでお気軽にどうぞって丸山さんも言ってました」
松下君は25才、食関連の人脈が広くその仕事には定評がある男性社員だ。
ただイケメンという枠からは少し外れていてどちらかというとゆるキャラタイプか。
だからこそ、気兼ねなく会話ができるのかもしれないけど。
「そんなにたくさん招待されてるの?」
「ええ。多種多様な業種に年代も様々です。アルコールが入るのでお子様は来ませんけど」
ふうんと私の隣にいた沢田さんが頷いてニヤリとした。
「若者だけじゃないってことなら私も安心して参加できるってわけだ。素敵な出会いがあったりして。電撃結婚したらお祝い弾んでね」
沢田さんの発言にえ?っと私は耳を疑った。
沢田さんは常々生涯おひとり様宣言をしていて、退職後は海外移住生活をするとかでその準備も着々としていると聞いていた。
「沢田さん、結婚なんてくそ食らえだーって宣言してたじゃないですか。ここに来て撤回ですか?」
驚いたのは松下君も同じだったらしい。
「まあねー。いい男を捕まえてアラフォー女性の星になるのもいいかと思って考え直したの」
沢田さんはうふふと笑った。