嘘の続きは
私の知る限り二人の間には甘い雰囲気はない。
確かに東くんがやたら沢田さんに絡んでいくことが多いと思うことはあった。

でもそれは弟が姉にかまってもらいたくて絡んでいるような感じに見えたのだけど、違ったのだろうか。

「本気ならいいってことですよね」

「もちろんよ。私たちに東くんの恋心をどうこう言う権利なんてないもの」

ね、と松下君に同意を求めると彼も深く頷いてくれた。
なのに東くんは顎が外れるんじゃないかと心配になるくらい大きな口を開けてポカーンとしたのだ。

「え?俺の恋心?えええ?」
いやいやいやと首を左右にブンブンと振り始めた。
「いやいやないない。俺のヨメはないっ」

「ああ、すみません。言い方間違えました。うちの嫁っていうのはうちの親父の嫁ってことですよ」

東くんが口に手を当ててくくっと笑い始め、私と松下君はパチパチと瞬きをした。

うちの親父?
うちの親父って東くんのお父さんってこと?

「ごめん、どっちにしてもも意味がわからないんだけど」

「そうですよね。俺の説明不足でした。実はうちの親父と沢田さんって若い頃の知り合いで。だから沢田さんの相手は俺じゃなくて」

お父さん?
私と松下君は思わず顔を見合わせた。

その時会場がざわめいた。
どうやら新しい料理が運ばれてきたらしい。

「・・・ええっと。食べながら話しますよ。まず料理、取りに行きましょう」

東くんの視線が料理が並ぶテーブルの方に向けられた。

そう、沢田さんの話は気になるけれど今日の目的はこっち。私が求めていた丸山シェフのお料理。

今評判のシェフの新作料理。新作、新作~ぅ。
目の前に並ぶ色鮮やかな料理にウキウキとしてくる。
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