嘘の続きは
「お待たせしました。食前酒どうぞ」
松下さんが戻ってきて私の目の前に小さめのグラスが差し出された。
グラスの中の小さな泡がぷくぷくと浮かんでは消えていく。

「炭酸?」

「そう発泡ワインです。飲んでみて下さい」

口に含むと爽やかな酸味と甘みが広がっていく。今まで飲んだことがない爽快感と共に炭酸が鼻の奥に抜けていき身体までスッキリしていくような気がする。

「なんだか不思議な感じ」

私の呟きに松下さんがとびきり嬉しそうな顔をした。
「それがシェフの狙いなんです。ぴったりはまってくれて最高です」

聞けば、この発泡ワインを丸山シェフに紹介したのが松下さんなんだという。
丸山シェフもこれを気に入ってアペリティーヴォのメニューに加えることにしたんだとか。
松山さんって見た目はゆるキャラタイプなのに仕事が出来る人というのはホントだったんだなぁ。

食前酒でのどを潤し早速アンティパストのお皿を手にした。

そのお皿に載るブルスケッタを手にしてちょっと固まった私に東くんが「どうしました?」と声をかけてきた。

「・・・これさ、このサーモンにかかってるソース。これもしかして、もしかするとアレ」

ん?と私の手にあるブルスケッタを東くんがちょっとだけ見つめた。
「そうですね、たぶんキウイです」

がーん。
「そうだよね。これキウイソースだよね。黒い粒々あるもんね」
がっくりとブルスケッタを持ったまま私はうなだれた。

「ああそうか。アレルギーあるんでしたね。キウイに」

東くんが可哀想にと言いながらニヤニヤし始めた。
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