嘘の続きは
「あれ?食べないんですか?ずいぶんとここの料理楽しみにしていたんじゃ?」

くっそーこいつめ。

私はキウイが嫌い。アレルギーってわけじゃなくてカエルの卵みたいで嫌いなだけ。
以前ニュージーランド出張のお土産にと東くんがキウイジャムを買ってきてくれたんだけど、私は食べることができなかったのだ。

その時に「カエルの卵みたいで無理」って言ったのをしつこく覚えていてたまにネタにされている。

「このバゲットも特別製らしいですよ~うまいのに食べないんですかあ」

この年下の男はここぞとばかりにからかってくる。ちょっとイケメンのくせにああかわいくない。

「うるさいよっ」とカエルの卵と連呼される前に東くんの口に手にしていたブルスケッタをぎゅっと押し込んでやった。

私は見たかとツンっと顎を上げてやったけれど、いきなり突っ込まれたブルスケッタをむせることなく東くんは美味しそうに咀嚼し始めてどうにも負けた感がする。

「子どものケンカですか・・・」と松下さんの小さな呟きが聞こえて更に敗北感を味わうことになった。

なんか悔しい。
こうなったらこのお皿のものを全部口に突っ込んでやろうかしらと右手にフォークを握ると、いきなり私の手首が背後から伸びた大きな手につかまれた。
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