嘘の続きは
驚いた拍子に左手で持っていたお皿を落としそうになり、「あぶねっ」と慌てて向かいにいた東くんがお皿を支えてくれたけれど。

私の右手を掴んだ人の顔を顔を見て身体が固まった。

うそでしょ?真島さん。
なんで?

真島さんが怖い顔をして私の手首をつかんでいた。

「ど、ど、どうしたんですか」

思わずどもってしまったのは仕方ないだろう。
この人がなんでここにいて、どうして私の手を掴んでいるのか。
しかも、恐ろしく顔が怖い。

「ここで何してる」

いや、何してるって真島さんも何してるんだろう。

「丸山シェフの試食会に参加してます・・・?」

私の答えに納得いかないのか目を細めてチラリというよりはジロリと東くんを見るとすぐに私に向き直った。

「行くぞ」

普段より2段階低い声を出しつかんだままの私の腕を引っ張ると、スタスタと歩き出した。

えええー。
行くってどこに。

ぐいっと引っ張られて足をもつれさせながら真島さんにぶら下がるように歩き出すと更に身体を引きよせられた。

「秋野さん?!」
松下君が目を見開いた。

「ごめん、ちょっと抜ける」

状況はよくわからないけれど、呆気に取られている東くんたちに手を振ると、何だか怒っているらしい真島さんに合わせて転ばないように小走りになりそうな足の動きに必死になって付いていく。
< 69 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop