嘘の続きは


「おい、なんの冗談だ?」

「ごめーん。冗談じゃなくって。ふふふ。真島さんはどっちをより心配してる?」

「は?」

思い切り不機嫌な声を出せば、電話の向こうで真紀が笑いを深める。

「だから、朋花とタカトのお姫様の果菜ちゃんよ。二人とも明日の映画祭に連れて行くから警護ヨロシク」

「ヨロシクじゃないだろ。何がよろしくだ。二人が夕方のテレビ番組に顔出したせいでSNSで騒ぎになってるって木田川さんから報告があったぞ。これ以上騒ぎを大きくしてどうするんだ」

悪びれない様子の真紀に心底イラっとする。

朋花とは俺の勘違いから勢いでキスしてしまった先月から会っていない。

***


東京の事務所のデスクで社長の代わりに書類をさばいていた俺のところに「専務ちょっと問題が・・・」と北海道にいるLARGOのマネージャーの木田川さんから連絡があったのはもうすぐ19時になろうかという時間だった。

「真島さん。秋野真紀がタカトに無断で奥さんの果菜さんを北海道に連れだしています。既にタカトは知っていますが、秋野が果菜さんにタカトには秘密にするようにと言い聞かせているらしいのでタカトは知らないふりをしています」

何だって真紀はそんなめんどくさいことをしているんだ、と大きなため息が出そうになる。

タカトもタカトだ。なんだって真紀の言うなりになっているんだか。

・・・いや、真紀の言うなりになっているんじゃなくて、真紀の言う事を聞いている新妻の果菜さんのことを思って知らないふりをしてやってるのか。

溺愛もそこまでいくと拍手ものだな。
タカトと果菜さんはいろいろな問題を乗り越えてつい先日入籍していた。

まだ世間には公表していない大事な時期であるのに真紀は何をしようとしているんだか。

「それだけじゃないんです。北海道の地元テレビ局の小さなほんの5分もないものですが・・・天気予報のコーナーになぜかタカトの姫の果菜さんと真紀の妹の朋花さんが素人として出ていて。
それに気が付いたファンの間のSNSでちょっとした騒ぎになっています。大きな問題にならないといいんですが、彼女たちのバックに真紀がいるとしたらこの後他にも何か騒動が起こるんじゃないかと」

うっと息をのんだ。

真紀のスケジュールを思い出したからだ。

昨日から九州でロケ。今日の夕方から1週間オフになっているがロケ先から北海道に入り、明日は夫の西隼人に同伴して映画祭に参加することになっている。

< 76 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop