嘘の続きは
レッドカーペットの周りに陣取る人々は映画ファンもいればラルゴファンもいるし、ただ芸能人を観にきただけの者もいる。

とにかく何もなければいいがと自然と早足になってしまう俺の目に映ったのは見たくない光景だった。

既に厄介事が起こっていた。

恐らく映画ファンらしき一般人の若い男が一般客ゾーンから身を乗り出して関係者専用ゾーンにいる姫の片腕を掴み自分の方に引き寄せようとしていた。
姫の隣では真っ青な顔の朋花が必死になって姫を男から遠ざけようとして引っ張っている。

それに気がついた周囲の若者たちの何人かが声を上げていた。
「姫ー逃げてー」
「姫を離せ」
「姫に触れるな」

折しもレッドカーペット上には話題のイケメンお笑い芸人が若手女優、ベテラン俳優と共にいてサイン攻めに遭っている。警備員たちはそちらに注目していて、正面から外れているこちらの騒ぎに気が付いていない。

舌打ちをしながら人垣をかき分けながら何とか彼女たちに近づいた時には周囲にいたLARGOのファンたちによって既に姫の拘束は解かれていて、姫が助けてくれた彼らに頭を下げていた。

素早く姫と若い男との間に身体を入れ込むと「早く中に入りなさい」と移動するように促した。

「真島さん・・・」朋花の小さな声が聞こえたが、今会話している余裕はない。

「さあ、早く。騒ぎが大きくなる前に」両手を広げて彼女たちを背中に庇う。
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