嘘の続きは
建物の中に入り会場内に続く長い廊下まで二人を連れて来てから俺は立ち止まった。

「さて」と声を出すと、真っ青だった朋花がガバッと身体を折り曲げた。

「ごめんなさい!本当にごめんなさい。怒らないで。迷惑かけてごめんなさい」

声も身体も震えている。
・・・俺のことそんなに怖いのか。

姫も朋花の様子に驚いたらしく大きな瞳をさらに大きくして朋花を見つめ、それから様子を窺うように俺を見た。

姫の疑問はわかる。
彼女は恐らく俺と真紀、朋花の関係を知らないのだろう。仮に知っていたとしてもこの朋花の怯え方は尋常ではない。俺も驚いているのだから。

影武者をしている時の朋花は俺に対して常に攻撃的だった。
それは過去の俺の行いのせいなのだから構わない。先日の丸山シェフの店で会った時のあのことが関係して彼女がこんなに怯えているのだとしたら、これはかなり困ったことになったのかもしれない。

先日強引にしたキスで朋花は俺に恐怖を感じてしまったのだろうか。

「・・・もっと目立たないようにできなかったのか?」

小刻みに震える朋花にできるだけ優しく声をかけたつもりだったがそれでも朋花はびくりと身体を震わせた。

「真紀に気を付けるように言われてただろ?」

「お姉ちゃん?何も言われてないけど?」

朋花は小さく首を横に振った。

・・・真紀。
アイツはたぶんこの事態を予測していた。
LARGOのレッドカーペット登場シーンを姫が見たがることも周りの観衆が姫に気が付くことも。
わかっていてこの二人に何も忠告しなかったのだと思う。
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