嘘の続きは
そのことも俺は怒ってるわけじゃないんだ。それは本当に。

「よろしく頼むよ。でもまあもう籍も入れたしタカトから簡単には逃げられないけど」

二人の入籍はまだ機密事項なので俺の声も自然と小さくなる。
ニヤリと笑うと、姫もがらりと表情を変えた。

「逃げませんし、私も逃がしません。どうか今後ともよろしくお願いします」
潔く清々しい表情で姫は俺に言い切って頭を下げた。

ああ、タカトが惚れたのはこの子のこういうところなのかもしれない。
穏やかで落ち着いていてどこかほんわかとした印象の彼女。だが、彼女の纏う空気はいつも凛としていて清々しいのだ。

芸能界という複雑な世界に身を置く俺が純粋な朋花に癒しを求めてしまうようにタカトも果菜さんという女性の本質な部分に惹かれたんじゃないのだろうか。
タカトは素晴らしい女性と巡り合うことができたようだ。
俺の頬も緩んでいった。

「・・・朋花ちゃんも無茶するな」
姫の隣でしゅんとしている朋花の頭に手を載せて昔したように髪をくしゃっとしてやると、朋花の口から「はい」と小さく声が漏れた。

出会った頃から高校生になる頃までいつもしていた懐かしいこの行為。
朋花が何か頑張った時にはいつもこうして彼女の頭を撫でていた。
怒ってない、この気持ちが朋花に伝わっただろうか。
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