嘘の続きは
事は思ったよりもSNSで世間に広がってしまっていた。
それというのも姫があの場にいた人々に誠実な対応をしたことと、この二人が素人にしては輝くものを持っているからだろう。
ハッシュタグが綺麗なお天気お姉さん、美人旅行客、東京からの刺客だったのが月の姫や秋野真紀妹という単語が出てきて個人が特定されるようなものに変わっていた。
ほとんどが好意的なものであったけれど、心配しているのは評判などではない。
ここに今彼女たちがいることが知られてしまっているのだ。これはかなり憂慮する事態だ。
会場を出てから後をつけられたり、周りを囲まれる可能性もある。
それだけLARGOのタカトの恋人である月の姫の存在はファンの間でも有名で彼女の素顔を知りたがる者は多い。
月の姫と呼ばれるだけの美貌と存在感。彼女のファンができることは簡単に予想される。
朋花に関してもかなり心配だ。
姉妹だけに顔の造作は整っているし、朋花は年齢よりも若く見え笑顔が可愛らしい。
朋花が10代の頃には殺到したスカウトを断るのに苦労した。今でもまだ狙っている事務所があるというから油断できない。
結局、真紀の悪戯心がきっかけで起きた一連の騒動は西隼人の事務所の副社長の指揮のもとこれ以上の騒ぎにならないように配慮された作戦が組まれることになった。
他の事務所の世話になることに抵抗を感じなかったわけではないが、真紀の夫である西隼人が妻の尻拭いをしたいと言い出し、それを真紀が殊の外喜んでいたこと、西の事務所の副社長までもが嬉々として二人の脱出作戦を指揮し始め、あちらの事務所に借りがある立場としてはそれを止めるすべはなかった。
そうしてタカトの姫をタカトの元に引き渡し、朋花は事務所のスタッフに付き添わせその夜のうちに東京に戻すことになったのだった。
朋花は俺が連れて帰るつもりだったのにーーーー。