嘘の続きは
深夜、俺は西隼人と真紀が泊まっているホテルのスイートルームに呼ばれて出向くと、真紀はおかんむりだった。
「バッカねぇー、ホントに。何であっさり東京に帰したのよ」
「うるさい」
「まあまあ二人とも」と向かいに座る西隼人がグラスにワインを注ぎながらうっすらと笑っている。
「隼人さんだって呆れない?このヘタレのうすらボケに」
真紀の酷い言い方にもこの真紀の夫は動じない。それどころか笑っているのだから懐が深いというのか、趣味が悪いというのか・・・。
「ヘタレはまだしもうすらボケって、お前なぁ」
「だってそうじゃない。いい加減にしっかり捕まえなさいって」
真紀はくしゃっとその顔を歪めた。
「私のせいなんだから・・・ここまでこじれたり待たせたり…全部私のせいなんだから」
泣き出しそうな真紀をダンナの西が肩を抱き寄せ励ますように空いている手を握る。
自然にでたそんな仕草に二人の間がうまくいっているのがわかり、ホッとした。
「違う。真紀のせいじゃないから」
自分のせいだと信じて疑わない真紀。
真紀の存在が関係しているのは事実だが、これは真紀のせいではない。
「嘘よ。私のせいだわ。朋花は子どもの頃から真島さんのことがずっとずっと大好きで、確かに大学を卒業する頃まで好きだったのよ。
真島さんだって特別な感情を持ってたでしょ。でもそれを真島さんが受け入れなかったのは私のためなんだから。年の差とか立場を気にして自分と私の妹のことがスキャンダルになって私のマイナスになるかもしれないって」
とうとう真紀は泣き出した。
「私のせいで二人が離れて、朋花はすっかり感情を隠すようになって、真島さんは更に仕事ばっかりするようになって。でももう朋花はこどもじゃない。27にもなるのよ。私も結婚したし、何も障害はないはずでしょ」
真紀は昔から俺に憧れる朋花の気持ちだけでなく、俺の気持ちに気が付いていた。
ただ俺自身が朋花に対して保護者以上の気持ちを持っていることに気が付いたのはあの朋花が離れていった大学卒業の頃だったのだが。