秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
だからこのマンションに直樹が住んでいたのか……と点と点が繋がった。

「俺は会社全体を任されているわけじゃないから、まだまだなんだけどな」
「そんなこと……」

 御曹司だからといって、親に頼り切っている感じはしない。どんな働きをしているか詳しくは知らないけれど、現在の直樹を見る限り社会人として一生懸命仕事をしている人のように見える。

「とにかく送っていくよ。俺の車に乗れ」
「ううん、それは大丈夫。自転車も置いて帰れないし……」
「バカ。そんなに熱があるのに自転車を運転して事故でもしたらどうするんだ。冗談もいい加減にしろ」

 強い口調で怒られて、私は少し怯む。直樹の言うことが正論で何も言い返せない。

「いいから俺に甘えておけ。お前は病人なんだから」
「……うん。ありがとう」

 直樹が車を玄関に回しに向かっている間に、服を着替えて帰る準備をする。体に力が入らなくてなかなか進まないけれど、やっとできたころ、スタッフルームまで迎えにきてくれた。
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