秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「そんなに見るなよ」
「……ごめん」
嫌がられたかな……。でもこんなに近くで彼のことを見られることなんて、この先ないかもしれない。そう思ったら、今のうちに見ておきたかった。
あーもう、未練タラタラで嫌になる。
一緒にいると、どうしても気持ちが持っていかれそうになってしまうから困る。
運転席に乗った直樹は、エンジンをかけて車を発車させた。
「とりあえず保育園だよな」
「うん。でも前までで大丈夫。そこからは歩いて帰るから」
樹里とあなたと会わせることなんてできない。もし直樹の子だと気が付かれたら、今までの私の努力が無駄になってしまう。
「もういい。遠慮するな。今日は俺の言うことを聞くんだ」
「でも――」
何度だめだと言っても聞きいれてもらえず、そうこうしている間に保育園の前に到着してしまった。
「着いたぞ。体が辛いなら俺が代理で行こうか?」
「ううん、大丈夫。私が行く」
どうしよう、と心が決まらないまま、マスクをして園内に入る。園児用帽子を目深に被らせて顔を見せないようにすればいけるのではないかと考える。