秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

「じゅりね、よんさいなんだよ。おねえさんでしょ?」
「四歳……」

 何もかもがバレてしまう。そう思うのに、瞬発力の欠けた私の今の体ではすぐに駆け寄ることもできない。

「あなたのおなまえは?」
「……俺は、小野寺直樹」
「ママの、かれし?」

 それ以上余計なことを言わないで、と力を振り絞って駆け寄る。

「変なことを言わないの! 小野寺くん、ごめんね。子どもの言うことだから、気にしないで」
「かれしじゃないなら、パパ?」
「樹里ってば!」

 樹里を黙らせようと近づくけれど、それを振り払って話を続ける。

「樹里ちゃん。パパはいるだろ?」
「……いないよ。ママだけ」

樹里の発言にヒヤリとする。すぐに否定しないと!

「そ、そんなことないでしょ。パパいるじゃない」
「いないってば。ママ、うそつかないで」

 慌ててフォローしても、樹里はいないと言い切る。樹里が正しいので、嘘をついているのは私だから……何とも言えない複雑な気持ちになる。
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