秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「出張に行ってばかりだから、いないと思ったのね。小野寺くんごめんね、変なことを聞かせてしまって」
「いや、いいんだ。さぁ、樹里ちゃん。おうちまで送ってあげるから、車に乗って」
「わぁーっ、すごいくるま!」
見たことのないような高級な車に興奮する樹里を後部座席に押し込み、私も隣に乗り込む。
これ以上会話をしてボロを出さないようにしなければ、と思っていたのに、私たちの自宅アパートの前に着いたとき、最悪な事態になってしまった。
下車して早々に立ち去ろうとしていたのに、偶然に私のアパートに訪ねてきた義父。母と一緒に温泉旅行に行ってきたのだとお土産をドアの前に置いて帰ろうと来てくれたみたいなのだけど――
「じぃじ!」
義父を見つけた途端、樹里が駆け寄りそう呼んだのだ。
もうダメだ……。
私の背後に立っている直樹の顔を見られない。
昔、義父のことを紹介し、「この人と結婚するの」と嘘をついたというのに、樹里がじぃじと呼んでしまったことで旦那でないことがバレてしまった。
どう言い訳をしていいか頭が回らず、目の前で義父と樹里が一緒にいるところを眺めるしかできない。