秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「友里ちゃん!」
義父がこちらに気がつき、私を呼ぶ。
「ママ、じぃじが、ばぁばと、おんせんにいったんだってー。おんせんって、なぁに?」
この会話で、全て知られてしまっただろう。
松岡さんは私の母の再婚相手だってこと。そして樹里は私の子どもであるけど、父親は松岡さんじゃない。
では、誰の子か。
二歳だと言っていたけれど、本当は四歳。
逆算していけば、自ずと答えが見えてくるに違いない。
背中に冷や汗をかきながら何も言えずにいると、そっと肩に手を添えられた。
「今日は早く家に帰って寝たほうがいい。中まで送ろうか?」
「……ううん、大丈夫」
「治ったら俺と二人きりで会う時間を作ってほしい。……いいだろ?」
ここまでしてもらっておいて「できない」とは言えない。それにこの状況を説明しなければ彼は納得しないだろう。
今ここで問いただされなかっただけよかったと思うしかない。
「……わかった。今日はありがとう」
「うん、お大事に。無理はしないように。何か助けが必要なら、いつでも連絡して」
そう言って直樹はさっと名刺を差し出し、力のない私の手に握らせた。
有名企業の名前と、役職が書かれた名刺には、彼の名前と電話番号が記されていた。