秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
宿った命を守ることで精いっぱいだったのだ。
「返事は今すぐじゃなくていい。樹里の気持ちだってあるだろうし、ゆっくり考えてくれたらいい。でも俺のことを少しでもいいと思ってくれるなら……ふたりの間に俺を入れてほしい。家族になりたい」
「そんなのダメ。直樹は小野寺グループの跡継ぎなんだよ。私たちが一緒になるなんて許されない」
直樹のお母さんに頼まれたことを考えると、そんな自分勝手に決められない。結婚は家と家との結びつきがある。ふたりだけがよければいいというわけではない。
「そんなの関係ない。俺たちが離れている間に祖母は他界した。だから今は結婚に対して口を出してくる人もいない。だから心配しなくていい」
「ええ……? そう、なの……」
直樹がそう言うものの、実際のところはどうかわからない。
腕時計を見ると、もうすぐ休憩の終わる時間に近づいていることに気が付いた。
「私、もう行くね」
「あ、うん、わかった。じゃあ、今週の日曜日に会いに行くから」
さっきの話がまだ生きていたんだと驚くのに、直樹は一歩も引かず話を進めてくる。
「そんなの……」
「アパートの前に迎えに行く。十時に」
そう言い切られて、私は何も言えなくなってしまった。