秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
15.一緒に

午後五時。

 現在俺が籍を置いている会社の重役会議を終えて歩いていると、ジャケットの内ポケットに入れていたスマホが震える。

 誰からだろうと手に取り見てみると、友里からだった。

 慣れないスマホを操作し、誤って発信してしまったみたいで、出る前に切れてしまった。そして「ごめん、間違い」とメッセージが届く。

 だろうな、とわかっていながら、ふと顔が緩んだ。

 新しい携帯電話に悪戦苦闘しながらも樹里の写真を送ってくれるようになり、俺たちの距離は少しずつ縮まってきたような気がする。

 些細なことでも知らせてくれて、日常に友里と樹里の存在を感じて、初めて味わう幸福感に浸る。

 友里と別れてからの五年間、ずっと特定の女性を作らなかった。誘われることもあったが、俺の気持ちが乗らず本気になれなかった。
 もう何年も前の彼女のことを引きずっていると認めたくなくて、友里のことを思い出しては拒絶して悪態をついていた。自分が本当に子どもだと呆れてしまう。
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