秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

「どうしたんだ?」
「あの……っ、あのあの……!」
「ママ、うごいたよ、はやく!」

 奥で樹里の明るい声がして、玄関から顔を出して中を覗く。するとキッチンのすぐ側で何かを指さしている樹里が見えた。

「樹里ちゃん、どうしたの?」
「あ、なおくん! キッチンにゴキブリがでたの。ママこわいってなくの」
「やだ……怖いっ、小野寺くん……!」

 ゴキブリという名前を聞いただけで震えあがる友里は俺にぎゅっとしがみつく。久しぶりの抱擁にドキドキしていることを隠して、腰に手を回す。

「大丈夫だよ。俺が見てくる」
「うん……」

 今にも涙が零れそうになっている友里を玄関に置いて、俺は部屋の中に入った。
 キッチンの壁にいるゴキブリは動かず、その場をじっとしている。その様子を喜々として見ている樹里は強い。もしかして虫が平気なのは俺似なのか?

「樹里ちゃん、怖くないの?」
「こわくない。いつもむいむいがでると、ママがなくから。じゅりがまもるの」
「そうなんだ」
 
< 136 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop