秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
樹里は毅然とした態度でブイサインをする。その逞しい様子が微笑ましくて、俺は頭を撫でた。
「けどこの高さじゃ、樹里ちゃんには難しいよな。俺がやるよ。何か叩くものあるかな?」
「あるよ。これ!」
ポストに入っていたらしきA4サイズの冊子を渡され、俺はそれを丸める。
「いくぞ」
「小野寺くん、気をつけてね。ああ、怖い……」
遠くのほうから怯えながら見つめている友里に頷き、一気に倒しにかかった。一度逃げられかけたが、何とかしとめることができて、無事戦闘終了となった。
「なおくん、やったー!」
「やったな! よかった」
樹里とふたりで喜びを分かちあっていると、友里は脱力して玄関の近くに座り込んでしまった。
「……大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。この家にゴキブリがいたなんて……ショックで泣きそう」
今まで一度も遭遇したことがなかったようで、この家に現れてしまったことにショックを隠し切れない様子。