秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「……まぁ、一匹いたら何十匹も――なんて言うけど。そんなの気にするなよ。この家はもともと古そうだし、いそうじゃん」
「やだ! そんなこと言わないでよ」
何十匹も、という言葉に反応して、友里は立ち上がって俺に抱きつく。怖い怖いと怯えている様子がとても可愛くて、もっと虐めたくなる。
「ママはほんとにむいむいがだめなの。なおくん、いじめちゃだめだよ」
「ごめん、ごめん」
嬉しくて、樹里の前だというのに離せない。
「うちに住めば? 俺の家は虫いないけど」
「そんな……」
「なおくんち!? いきたい、いきたい! ねぇ、いっしょにすもうよ!」
友里よりも断然乗り気になった樹里は、俺の脚にしがみついて「早く行こう」と急かす。
「樹里、だめよ、そんなの」
「えー? なんで? なおくんといっしょにいたいよ」
樹里が俺の味方をしてくれると心強い。
友里の気持ちが固まらないのは、樹里のことがあるからだ。
樹里が俺の方についてくれたなら、いい方向に話を進めることができるだろう。