秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「俺さ……ずっと友里のことを引きずってた。フラれたあとも、ずっと忘れられないでいたんだ。どうして俺に飽きたんだと友里を責めたこともあった。だけど、そんな中、友里は俺の子どもを妊娠して、産んで、育ててくれていた」

 直樹の温かな手が私の後頭部を撫でる。その大きな手の温もりを感じて、うまく息ができなくなるほど高揚していく。
彼の触れる髪のひとつひとつに神経が通っているみたいに全部がドキドキしている。

「俺が頼りなかったから、こんな苦労をさせたんだよな。本当にごめん」
「そんな……謝らないで」

 私の身勝手な行いでこうなった。だから直樹が自分を責める必要なんてない。
 そう言うけれど、直樹は首を横に振る。

「俺の母親に言われたことを守り、身を引いてくれたんだよな? それを跳ね除けるような力がなかった俺の責任だよ。俺が未熟だったから、身重の友里を守れなかった。別れを選択させるしかできなかったんだ」

 自分を責める直樹に胸を痛めて、何度もかぶりを振る。そのたびに涙が零れて、頬からポタポタと落ちていった。
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