秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
ずっとずっと求めていたのは、この優しくて温かな手だった。

 付き合っていても、いずれは別れなければならないと思っていて辛かった。全部を話して「それでも別れたくない」と素直に泣きつきたかった。

 だけど直樹を好きになればなるほど、私たちは釣り合っていないのだと自分を責めることが多くなって、彼のためだと言い聞かせて別れを決めた。

 本当は離したくなかったのに……。

「再会して嬉しかったのに、意地悪ばかりしてごめん。こういうところがガキだし、ダサいよな。ほんと、格好悪い」

 直樹からすれば、一方的に自分勝手な理由で別れを告げた女だったのだから、そういう態度をとられて当然だと思っていた。だから気にしなくてもいいのに。

「格好悪くないよ、直樹はいつでも素敵な人だよ」
「友里……」

 ついぽろっと彼のことを直樹と呼んでしまった。名前で呼んだことに気づいたようで、直樹は驚きながら嬉しそうな表情を浮かべた。

「私も……ずっと好きだよ。直樹のこと、忘れたことなんてない」
 
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