秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
黙り込む私の表情から何かを読み取ったようで、直樹は私の顔を見つめて口を開いた。
「いろいろ話したいこともあるし、勝手に辞めるなよ」
先に釘を打たれてしまい、言葉を失う。
「じゃあ、あとでクリーニングを頼むから、また電話する」
「はい、かしこまりました」
キャリーケースを引いて、エレベーターへと向かう直樹の後ろ姿を見送って、私はその場にしゃがみ込んだ。
――どうして再会しちゃうかな!
もう二度と関わらないと決めたはずなのに。樹里のためにも、私のためにも……そして彼のためにも関わるのはよくない。
そう思うのに……彼の住んでいるマンションで働いているなんて!
最悪な状況なのに胸の鼓動は収まらなくて、全身に響くくらいドキドキしているのを隠せない。
そして過去のことがたくさん蘇ってくる。
蓋をしていた、私の過去が。