秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
電話の向こうの友里は「すごいじゃない」と喜んでくれたが、会えないことに関しては、少し寂しい様子を浮かべてくれた。
『会えないのは寂しいけれど、仕事だもんね。直樹、頑張って』
「ありがとう」

 再会してからずっと俺のことを「小野寺くん」と呼んでいたが、ついに昔のように名前で呼んでくれるようになった。

 友里に「頑張って」と声をかけられたら、何でも頑張れそうな気になる。
男って単純だな、と呆れるけれど、好きという気持ちがこんなに俺の原動力になるのだとつくづく実感した。

 電話が終わったあとも、じんわりと胸が温かくて、俺は一人じゃないのだと身に染みる。

 それから本当に激動の毎日で、引継ぎと本社への準備、送別会と目まぐるしい日々を送ることになった。

 友里や樹里と連絡を取るけれど、会うことは叶わず、気が付けば二週間が過ぎようとしていた。

「はぁ……」

 やっと解放された、とため息がつく。

 今日は大口の取引先だった社長との会食で、遅くまで付き合わされた。もう十二時を回っていて、疲労で体がずしっと重たい。早く家に帰って眠りたい。
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