秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
会社で用意してくれた送迎用の車に乗り、自宅マンションまで向かう。座席に体を預けて少し眠っている間に到着したようだった。

「お疲れさまでした」

 運転手に遅くまで申し訳なかったと挨拶をしたのち、俺は自宅へと向かう。

広々とした豪華な部屋に住んでいるけれど、帰ると真っ暗。誰もいない冷え切った家に帰ると、とても侘しい気持ちになる。

 本当は家族がいるのに……。彼女たちとまだ本当の家族になり切れていないのだと感じて寂しさを感じる。

 開錠して中に入ると、玄関に電気がついている。

 今朝、つけたまま出かけたのだろうか? それともハウスキーパーが掃除に来た際に消し忘れたか?

 そんなことを思いながら足元を見ると、女性ものの靴と小さな女の子の靴が並んでいる。

 まさか、と思い急いで部屋の中に入ると、テーブルの上に作り置きの夕食が並べられていた。そしてその隣に拙い字で書かれた「おかえり」の文字。

 樹里が一生懸命書いてくれたようで、上手とはいえない字だけど……「り」なんて反転しているけど、それがとても嬉しい。
 
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