秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
頭を下げて、これで話は以上だと打ち切る。食い下がる天野さんだったが、頑として受け入れない態度を崩さない私に諦めたのか、ため息をついて困ったように笑う。

「まぁ、いいや。そういう頑ななところも悪くない。仕事中にこんな話をした僕が悪かったね。松岡さんは就業規則をしっかり守るいい子ちゃんだからなぁ」

 彼がカウンターに置いていた手を握ろうとしてくるので、私はさっと奥へ引っ込めた。

「今度家に送っておくよ。じゃあね」
「あの……っ!」

 そんなの困ります!と言っても、天野さんは聞く耳持たずで外へと出て行ってしまった。

 家に送るって言ったよね?ってことは、私の住んでいるところを知っているってことだ。樹里のことも知られているみたいだし、家の場所も知られている。

 今やネット社会だし、全力で探そうと思えば出てくるのかもしれない。だけど、友人でもない男性に家を知られているのは恐怖に近いものがある。

 何か危害を加えてくる人だとは思えないが、どういう目的なのかわからない。

 困ったことになったな、とため息を漏らして、やらなければならない業務に取り掛かる。
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