秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
直樹が帰ってくるのは、だいたい十一時とか十二時くらい。

 付き合いで会社関係の人と食事ととってくることが多いみたいで、家ではご飯を食べていない。

 だけどもしお腹を空かせて帰ってきてはいけないので、キッチンを借りて晩御飯を作っておくことにした。
といっても、私にできるのは庶民的な料理しかなくて、普段直樹がどんなものを食べているか分からないから口に合うのか分からないけど……。

 煮物だったら、帰ってきてすぐに温めれば食べられるし、もし残っても翌日に食べられる。

 サラダが苦手な樹里も煮物の野菜なら食べてくれるし、ということで筑前煮と、焼き魚、出汁巻きという超和食を作っておいた。

「地味だな……」

 今までネットなど全くしなかったから知らなかったんだけど、世の中には料理の写真をSNSに投稿している人がいる。その人たちが作る料理は色鮮やかで、美味しそうなものばかり。

 それに比べて私が作った料理って、地味で華やかさに欠けている。

「もっと練習しなきゃ……」

 そう呟いたのと同時に、玄関の扉が開く音がした。
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