秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「三人でお出かけしていたんですか?」

 どう答えるのがベストなのか、ギリギリまで悩む。「いいえ、違います」と言うべきか、「そうです」と言うべきか……。
言葉を選んでいる間に、直樹がさり気なく答えてくれた。
きっと変に否定するより、肯定したほうが得策だと考えてくれたに違いない。

「……ええ、そうです」
「そうなんですか。お二人は……もしかしてお知り合い?」
「そ、そうなんです! 私たち、高校時代の同級生で」

 テンション高めに発言したものの、目の前の空気は冷えたまま。私の明るいテンションが浮いてしまった。

「へぇ……そうなんですか」

 天野さんは、笑顔を崩さないまま立ち上がる。次に何を言われるかと構えていたけど、これ以上突っ込む気がないらしく、会話はこれで終了した。

「じゃあ、僕はこれで」
「失礼します」

 お互いに頭を下げて挨拶をしたあと、私たちはそそくさとエレベーターへ乗り込んだ。
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