秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
本社であるエランコミュニケーションズに電話を入れて、スタッフが一名就業中にいなくなった可能性があると伝えてもらった。

その上で俺が同席していることを説明し、上層部へ電話を繋いでもらう。

 せいぜい専務あたりが出てくるのだろうと思っていたが、電話に出たのは社長の水原氏だった。

『お疲れ様です、直樹さん。直々にお電話をくださるなんて、珍しいわね』

 しっとりとした大人の女性の声。相変わらずお酒を飲んでいるんだろうなと思わせる、少ししゃがれた感じが懐かしい。

俺が小さいころは、水原氏も若いお姉さんという感じで「綺麗な人だな」と思ったものだ。

 その当時男社会だったにもかかわらず、女社長として会社をここまで大きくしてきたのだから、並大抵の努力ではできなかっただろう。
男にも勝る気の強さで有名な水原氏の声を聞いて、そんなことを思い出してしまった。

「急にお電話をしてしまい、申し訳ございません。今日は折り入ってお願いがありまして」
『ええ、何かしら?』

 実は――と状況を説明する。

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