秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
ひんやりとした指先に怯えていると、首筋へと向かっていった。

「離して……ください」
「やだよ。友里は僕のものだ」
「いやっ……」

 制服のシャツに手が近づいたので、必死に抵抗する。これ以上黙っていられない状況になってきた。

「何度もお伝えしていますが、私は天野さまと個人的に仲良くなるつもりはありません。だからこんなことをしないでください」
「うるさい。不倫女のくせに、選り好みするんじゃない」

 突然の大声に泣いてしまいそうになる。
男性に対してこれほど恐怖を感じたことはない。

「手荒な真似はしたくないんだ。抵抗しないで」

 再び優しい穏やかな口調になるけれど、声は震えている。不安定な情緒を感じて、この人はとても危険な人物だと改めて察した。

「どうして僕はダメなの? 友里のことをこんなに好きなのに」

 再び胸のボタンへと近づいてくる。
< 206 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop