秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
嫌だ、触らないで。
でも抵抗してしまえば、さっきのように怒るに違いない。
今度は大声だけで済まないかもしれないけれど、無抵抗のまま好き勝手されるのも嫌だ。
「そんなに怯えないでよ。愛してあげるだけだから」
「や……っ!」
「もしこれ以上僕を拒むのなら、君の大切な愛娘の樹里がどうなるか分からないよ」
樹里の名前を出されて、胸が壊れそうなほど大きく鳴った。
樹里に何かをするというの?なんて卑劣な強請りなのだろう。怒りと恐怖で体が震える。
「それだけは絶対に止めてください」
「君の出方次第だよ。可愛く従順になれば、樹里に何もしないであげる」
こんなところで屈してしまうのは悔しい。
だけど樹里に何かをされるくらいなら、私はどうなっても構わない。
樹里は私の命よりも大切な存在。愛する直樹と私の間に生まれた宝物のような娘だ。
それだけは絶対に食い止めなければ。
「ほら、いい子だ。静かにしていて」
樹里を守るため我慢しなきゃ――。