秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
そう思うけれど、目の前の状況が怖くて涙が溢れる。

 直樹、助けて。

 大好きな直樹の笑顔を思い浮かべて、冷静になろうと言い聞かせる。

 私、どうなるのかな?

 どんな目に遭わされるのだろうと不安が募る。生きて帰れるのか、そうでないのか。
 いろいろなことが頭に巡って怖くなる。

 下唇を噛み締めて涙を零していると、インターホンが鳴った。その音でさえ怖くて、私はビクっと体を揺らして反応してしまう。

「……誰だ?」

 ベッドの傍から離れ、モニターを確認する。そこには私のあとに入る予定のコンシェルジュスタッフの女性が映し出されていた。

「はい」
『天野さま、先日お預かりしておりましたクリーニングが仕上がってまいりましたので、お持ちしました』

 普段であれば、クリーニングを届けるなどというサービスはやっていない。
どうして今日に限って……と不思議に思ったが、これは逃げ出すチャンスかもしれない。
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