秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

「今日もありがとう」

 今日は約束の一時間が大幅に過ぎ、一七時半になった。下校時刻となり、私たちは席を立つ。
秋めいていたこの頃は、この時間ですっかり暗くなっていて夜の訪れを感じさせる。

「送るよ」
「ううん、大丈夫。一人で帰れるよ」
「だめ、送る」

 私の家は、学校から電車で二十分。そんなところまで送ってもらうのは悪いと断っても、小野寺くんは譲る気がないらしい。

「ほら、行くよ」

 私の前を歩く小野寺くんは、私のカバンを人質にして歩き出す。それがないと困ることを知っていて返してくれない上に、彼女に対するみたいな態度をとってくる。

 よく校内カップルが一緒に下校しているところを見ていたけれど、こうして彼氏が彼女のカバンを持ってあげている。

それを見て「いいなぁ」と心の中で呟いていたけど、まさか小野寺くんにこんなことをしてもらえるなんて信じられない。

 一緒に勉強をする仲になったけれど、プライベートな話はあまりしない。全然話さなかったときよりは、距離が縮まったとは思うけれど、友達かと聞かれれば首をかしげる。

 今だって。

 一緒に歩いていているし、荷物を持ってもらっているけれど、会話は弾まない。ただ黙って道を歩いている。

 私たちの間には少し距離があって、そんなに親し気でもない。
 だけど彼は私の歩調に合わせて歩いてくれている。彼の長い脚なら、もっと早く歩けるだろうけど、それはしない。
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