秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
彼の姿が見えなくなって、少しの間緊張が解ける。

とはいえ、油断のできない状況には変わりがないのだけど、いなくなった今この瞬間だけは安全だと思える。

 開錠する音が聞こえたあと、何やら会話が聞こえてきたが、その音が思っていたよりも長い。
その上男性の声も聞こえた気がした。

……何が起きてるの?

 様子を窺いたいけれど、体が動かないから見ることができない。
 モゾモゾと動いていると、玄関からの声が急に大きくなった。

「友里! 友里!! いるんだろ!?」

 聞き覚えのある男性の声がしてハッとする。

 直樹!?

「やめろ、勝手に入るなんて不法侵入だぞ!」
「うるさい、友里を返すんだ!」

 バタバタと激しい足音がして、私のいる部屋の扉が勢いよく開かれた。

「友里!」

 部屋に飛び込んできた直樹は、スーツを振り乱しながら入ってくる。
天野さんがその背後から掴みかかるようにして阻止していた。
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