秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

「直樹……!」
「勝手に入るな! 他人の家に勝手に上がりこむなんて犯罪だぞ。訴えてやる」
「離せ!」

 血相を変えて大声を上げる天野さんを振りほどき、直樹は私のほうへ近づいてきた。

「大丈夫か?」
「私は大丈夫。ありがとう」

 私の安否を確認してくれている背後で、椅子を振りかざした天野さんが見えたので、咄嗟に声を上げた。

「直樹、逃げて」

 私の声に反応した直樹は、天野さんの攻撃を避けて、椅子を持つ手に蹴りを入れる。

するとその衝撃で天野さんは体勢を崩したがすぐに立て直して直樹へ突進していく。

 闇雲に攻撃する天野さんに対して、直樹には少し余裕があるようで相手の攻撃を冷静に判断しているように見えた。

 昔に武術を学んだことがあるという話を聞いたことがある。そのせいかもしれない。

 天野さんの攻撃をひらりとかわしたあと、更に彼の手を握って動きを制止させる。そのままぐっと大きく曲げて背後に回ると腕を固定した。
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