秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
強く抱き締められて、直樹のぬくもりに包まれる。

このままもう会えなくなってしまうかもしれないと思った。
こうしてまた直樹に抱き締めてもらえて、本当によかった……。

 恐怖心から解放されて涙が止まらない。

直樹は私の震える体を撫でながら、「もう大丈夫」と何度も声をかけてくれる。


 それから私たちも被害者として警察署へ向かうことになった。
事件の内容を話し、何度も事情聴取が行われた。心身ともに疲弊していたけれど、なかなか帰れず警察署を出たのは夜中の十二時を回っていた。

「樹里は大丈夫かな……」
「大丈夫。安心して任せられる人に頼んでる。九時くらいに寝たんだって。心配いらないよ」
「よかった、ありがとう」

 直樹がそう言うのなら、安心して大丈夫なのだろう。明日の朝に預けたところに迎えに行こうと言われ、静かに頷いた。

 樹里が無事でよかった。私一人だったら、迎えに行くことができず保育園に迷惑をかけたことだろう。
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