秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
悲痛な表情を浮かべる彼のお母さんを見て胸を痛める。

「いいえ、そんなことありません。私こそ忠告されたにもかかわらず、こうして勝手に子どもを産んでしまい、申し訳ないと思っています」

自分勝手な私を許してもらえるとは思っていない。激高されて当然だと思う。

 樹里を産んだことは後悔していないけれど、小野寺家に迷惑をかけたことは、ちゃんと謝罪しなければならない。

「友里さん、僕たちは君に感謝しているんだ」
「え……?」

 お父さんの優しい声色に驚いて顔を上げる。直樹の両親は揃って温かな笑みを浮かべて私に語りかけるように話し出す。

「直樹は本当に君のことが好きだったんだろうね。君と別れてから人が変わったようになってしまった。よく言えばクールだったんだろうけど、感情を出さず淡々として他人に興味がないみたいに、冷めたところが目立つようになった」

 確かに、再会したころの直樹はそんな感じだったかもしれない……。

 お父さんの話に耳を傾けながら直樹のほうを見ると、過去の話をされて身の置き場がない様子だ。照れたような、困ったような複雑な顔をしていた。
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